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東京西部 西多摩8市町村の地域紙 タブロイド版/毎週木曜発行

【コラボ】西武信用金庫×西の風 Baton〜未来へつなぐ  vol.32 現場支える愛されフィクサー 奥多摩町の民話の宿「荒澤屋」 若女将、唎酒師 荒澤梢さん

2026年9月10日

 当コーナーは、西武信用金庫と西多摩の地域メディア西の風新聞社とのタイアップ企画です。3年目の2026年度は「若手経営者」「女性後継者」「100年企業」「個性豊かな名物社長」などがテーマ。西武信用金庫の取引先を支店担当者と本紙記者の伊藤寛子が訪ねます。


現場支える愛されフィクサー

 創業1908年、奥多摩町の民話の宿「荒澤屋」。若女将の荒澤梢さん(46)を、常連客は「かげのフィクサー」と呼ぶ。フィクサーとは、裏で物事を円滑に動かしたり問題を解決したりする実力者のこと。

 表舞台に立つのは、夫で調理師の荒澤貴さん(52)や語り部の義父・弘さんの役目。梢さん自身はごく普通の「母」「妻」として裏方に徹しているつもりだが、本人も認めるように存在感がありすぎて「全然『陰』になっていない」。義父たちも息子ではなく嫁の梢さんを頼りにして何でも相談してくるうえ、現場を支える学生アルバイトを束ねているのも彼女だ。それでも敢えて「陰」と呼ばれて愛されるところに、常連客との心地よい距離感が表れている。

 福島県いわき市出身。東京の短大に進学した流れで都内百貨店に就職し、案内係から憧れの化粧品販売へ転じた。吉祥寺の料亭で板前をしていた貴さんと出会い結婚。数年後、義父の体調不良をきっかけに奥多摩へ移ることに。「跡を継ぐという話はいつかあると思っていましたが、想定よりずいぶん早いタイミングでした」。志半ばで好きな美容の世界を離れる心残りはあったが、福島の田舎で生まれ育ったこともあり、特に抵抗感なく都会暮らしに区切りをつけた。

 戻った夫婦に両親は「継ぎたくないなら継がなくていい」と言ってくれたが、継ぐと告げるとすんなり一線を退いた。決めごとは若夫婦に任せ、手伝えることは手伝う関係が今も続く。

 承継直後は旅館の宿泊者数が伸び悩んでいた時期。夫が新たな柱で家業を引っ張ろうと館内に食事処「あかべこ」を開業すると決めた折、実は唯一反対したのが梢さんだった。子育ての真っ最中。「開業すれば自分が一番大変になる」と見抜いていたからだ。ところが、始まってみればの唎酒師ききさけしの資格を即座に取得。調理師の義父や夫、茶や花をたしなむ義母にはできない仕事で店を盛り立てた。開業から15年、今や「あかべこ」は彼女のファンで溢れている。店では地酒の澤乃井を勧めつつ、大好きなふるさと福島の酒も忘れない。

 休みの日に出かけても、頭の片隅には仕事のことがある。他店を目にすると「なぜここは繁盛しているんだろう」と無意識に観察してしまう商売人気質は、女将を務める中で研ぎ澄まされた。

【プロフィール】
荒澤梢(あらさわ こずえ)

福島県立磐城女子高校卒業後、都立短期大学に進学。卒業後、都内百貨店を経て外資化粧品メーカー勤務、接客の基本を学ぶ。奥多摩に移住後は地域住民と関わりながら町シルバー人材センターで勤務。現在は嫁ぎ先の㈱荒沢屋で若女将として奮闘中。


【訪問者】西武信金 河辺支店 営業統括副支店長 本郷さん(40)
奥多摩町や荒澤屋に対する荒澤さんの想いに触れ、貴重な時間でした。特に、「自身がどうしたら役に立てるか」考え、唎酒師の資格を取得された経緯が印象的でした。前向きな姿勢を見習い、私も地域の皆さまのお役に立てるよう活動していきます。


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