雲わく山並み、枯山水の庭 境内で心静かな時を 寺カフェ「岫雲」オープン   檜原村人里 玉伝寺

高台にある本堂の広縁に座り、雲の流れをただ眺める。視線を少し下に移すと、京都の龍安寺を思わせる枯山水の庭―。檜原村人里の玉伝寺(辻内法隆住職)が7月にオープンした寺カフェ「岫雲」は、来た人があわただしい日常を忘れ、心静かに過ごせる場所だ。
500年の歴史をもつ同寺だが、現在の場所に本堂を置いて21年。辻内住職が「毎日眺めても飽きない」という眺望がカフェのいちばんのご馳走だ。店名の「岫雲」は陶淵明の漢詩「帰去来」にある語。山裾から雲がわき上がる様子をさす。ここから見る風景の中で住職がもっとも好きな絵だという。
座敷から手入れの行き届いたコケ庭を眺めるのも乙な過ごし方。吹き抜ける風が涼しく、昼寝でもしていきたくなる心地よさだ。
メニューは自家栽培の大麦で作る麦ゼリー、麦わらびもち、麦こがしアイス、黒豆煮に黒蜜ときなこをかけた涼菓「麦づくし」(600円)、手製のらくがんか和菓子が付く抹茶、エスプレッソなど。甘味のほとんどは妻の麻里さんの手づくりで、素朴な味わいが場の雰囲気にぴったり合っている。
住職がカフェを始めたのは、寺からも見える「もみじの山」の整備活動がきっかけ。作業を通じて地元住民と都会の人との交流が進んでいる。飲食店のない同地区で作業に来た人たちに休んでもらえる場を作ろうと動き始めたら、とんとん拍子に事が進み開業に至った。
檜原村役場から、さらに車で20分。わざわざ訪ねて行きたいカフェだ。午前10時~午後4時営業。水・木曜定休のほか、法事・葬儀の入った日は臨時休業。電話で問い合わせてから来るのが確実。042(598)6332へ。 (伊藤)