来年9月に新規開館 吉川英治記念館 指定管理者で再出発 青梅市が 寄付を受領 吉川文学の魅力発信課題

住民説明会には40人ほどが出席し、記念館の再開に期待を寄せた

青梅市は、同市柚木町の吉川英治記念館の寄付を受領し、来年9月に新規開館する。指定管理者制度を導入。ふるさと納税などで運営を安定させ、通年開館で利用者増を図っていく。先月29日には地元で住民説明会を開いた。(岡村)

寄付を申し出ていたのは公益財団法人吉川英治国民文化振興会(吉川英明理事長)。施設は、敷地約5073平方㍍に母屋と洋風建築の離れ、展示室、庭園などがある。吉川の直筆原稿や書画、蔵書、写真など1万点を超す資料を所蔵し、総額は4300万円になる。寄付に当たっては母屋に耐震工事を施した。
吉川(1892~1962)は「宮本武蔵」「三国志」「新平家物語」など約240作品を残し国民的作家として人気を博した。生涯で約30回転居し、44年に港区から疎開して同市柚木町で暮らした。53年に品川区へ移るまで9年5カ月を過ごした。
記念館は吉川没後の77年3月、自宅跡に同文化振興会が開設した。来館者はピーク時に年17万人を超えたが、バブル崩壊を境に右肩下がりで減少。2003年にNHK大河ドラマ「武蔵(MUSASHI)」が放送されるとやや盛り返したが、14年の同市梅の公園の樹木伐採後は5000人程度まで落ち、観光シーズンだけ開館してきた。
同文化振興会は17年3月に閉館し、同市に寄付を申し出た。同市は現地視察を行い、状況報告をまとめ、翌年4月に設置した検討委員会で対応を協議してきた。同市が公共施設の保有量の削減に取り組んでいることから、歴史的建造物として評価を受ける母屋などは文化財登録制度を活用し、国庫補助を受けていくことにした。このほか新規開館に向けてはクラウドファンディングで資金を集める、ふるさと納税を使って運営の安定化を図る、全国に広がるファンとの連携を模索する、来館者増を図るため指定管理者制度を利用し積極的運営を図ることなどを決めた。
寄付後10年間は資料などを第3者に譲渡しないなどの条件が付いた負担付寄付になっていることから議会の同意を得て、年明けに同文化振興会と寄付に関する協定書を締結。指定管理者などを決め、9月に新規開館する。
今後は吉川文学の魅力をどう発信するかなどが課題となる。