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【あきる野】被災地に通い続ける鈴木暢さん チェンソー、重機の技術を持った動けるボランティアを育成中

2021年3月11日

 3・11(東日本大震災)をきっかけに鈴木さん(54、あきる野市草花)の災害ボランティアは始まった。全国の被災地での活動を経て2019年、技術系災害ボランティアの育成、支援を目的としたNPOを結成。主に消防士を対象とした重機、チェンソーの実践的な訓練を各地で実施している。


 この記事が掲載される頃、鈴木さんは2月23日の福島沖地震で被害の大きかった相馬郡新地町にいる。地震の際、同地区は3・11の時より激しいM6強の揺れに襲われ、4300棟を超す家屋に被害が出た。鈴木さんは現地で、瓦がズレる、落ちるなどの損傷を受けた屋根の応急措置に、スキルを持った仲間と取り組んでいる。傍ら近隣のいわき市、仙台市の非番の消防士に屋根補修の講習を行っている。

被災地にいることが多い鈴木さんだが、葬儀などの際は飛んで帰ってくる。「本業を他人任せにしたことはない」

 本業は、同市草花のの住職。仏事で新地町から一時帰宅したタイミングにつかまえ、取材することができた。鈴木さんはその翌日、現地に戻り、次のつとめがある春の彼岸までは屋根の補修を続けるという。

 被災地通いの始まりは3・11。発災から12日後、常磐道の開通を待っていわき市の知人の寺に物資を届けた。その際、目にした、焼け野原になった海岸沿いの光景に強く心を揺さぶられた。「俺はここ(被災地)に来続けなきゃと思った」 

 以降、2012年のつくばの竜巻、15年の鬼怒川の氾濫、16年の熊本地震、17年の九州北部豪雨、昨年の熊本県球磨村豪雨など、東北以外の被災地にも駆けつけ、復旧作業に携わってきた。

 多くの現場を経験する中で、被災者の心のストレスを取り除くのにチェンソーや重機を扱う技術が必要なことに気付いた。例えば自宅にかかった倒木を片付ける、壊れた道を重機で修復することで、被災した人は前を向ける。「避難所にいる人が被災した自宅に戻りたくなるように、想像していたよりは悪くない状態にしてあげるのが自分たちの役目」と自覚する。

 動けるボランティアの必要性を強く感じた鈴木さんは19年、NPO「DEF災害エキスパートファーム」を立ち上げた。平時は自寺の境内や裏山で訓練を、災害時は被災地で緊急支援と現地講習会等の技術支援を行っている。

新地町での屋根講習の様子。PCR検査を受けて臨む。非番の消防士は動ける災害ボランティアの最有力候補という

 昨年は200人を超す消防士が講習会に参加したが、実践的なチェンソー講習を行うには寺の裏山では限界がある。訓練に適した山林を探している。

 被災地に通い続けるのは、「行けば役に立てることがある」から。復旧技術を身につけて、その思いを強くした。もちろん、現地の食べ物や文化に触れるという楽しみもある。災害ボランティアのおかげで、46道府県すべてで寝泊りを経験した。被災地での出会いが、良い刺激になっているという。

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