檜原村上元郷 ひなたぼっこ 鈴木留次郎さん 東京唯一の村に仕事をつくる

檜原村上元郷で農産物の加工販売をする「ひなたぼっこ」の鈴木留次郎さん(74)は、ルバーブやナツハゼのジャム、イタヤカエデのメープルシロップなど村の特産品を作ろうと奮闘している。同村じゃがいも栽培組合の会長も務める。

「檜原以外の空気を吸っていない。檜原の墓に入るのが人生設計だ」という鈴木さんは、青梅農林高校を卒業後、同村役場に勤め、最後は助役を務めた。「役所をやめたら一村民」と話すが、第二の人生でも村を思い畑を耕す。

役場を退職後、同村観光協会事務局長として働き始める。毎日山に登るという男性に誘われ山へ入ることに。山道の道標が朽ちていること、安心して登山をするには少なすぎると、鈴木さんは村で製材したヒノキを購入。自身でカンナをかけ150本の道標を作った。登山客が道に迷っても場所が分かるようにと全てをナンバリングし、地図上に番号を落とし込んだ。

観光協会直営の直売所「やまぶき屋」で酒販免許を取得し、食品製造の営業許可を取る。これにより村の特産品であるジャガイモを使った「じゃがいも焼酎」の販売や、「じゃかいもアイス」の製造販売が可能になった。

鈴木さんがつくるジャムとメープルシロップ

イタヤカエデでメイプルシロップが作れることを知り製造に乗り出すも、何も分からず始めた計画は失敗。観光協会の一般社団法人化に尽力し、66歳で退職した。

その後、メイプルシロップ作り実現に向け動き出す。失敗を活かし資料を読みあさった。最初は林家の副業になればと考え、田中林業(同村本宿)に相談すると「本業が忙しくできないが、うちの山に50〜60本のイタヤカエデがある」と言われ、本格的に製造に乗り出した。

メイプルシロップの製造が軌道にのるとワークショップを開催。「たなごころビレッジ(同村人里)」の井上夫妻らの協力で、メイプルシロップ作り体験や、樹液採集の仕掛け体験を企画した。

10年ほど前、村議の山崎源重さんがルバーブの苗を神奈川県鎌倉市から持ち帰る。鈴木さんも譲り受け育て始めることに。1株から育て始めたルバーブは現在200株以上になった。ジャムを作るだけでなく、息子の敬さんがルバーブアイスの製造を始めた。

4年ほど前に都心の老舗果物屋が管理していたナツハゼの畑を借り受けた。ナツハゼのジャムは好評ですぐに売り切れてしまう。現在は生産量を増やすため、ナツハゼの苗を育てる研究も進めている。

「檜原に移住して農業をやりたいという若者がいる。ルバーブやナツハゼは害獣に食べられることがない。急峻地でも育てられる。若者が食べていくのに困らない仕事を作ることが自分の役目だ」と村の将来を見据え、新しい農産物を作ることが必要だと語った。(鋤柄)