福生 石川酒造 あきる野の畑でブドウを作る【連載3】

前回までのあらすじ

2022年6月にワインの製造免許を得た石川酒造は、免許取得以前の21年にワイン醸造に着手。一見違法と考えられるが、実は酒税法上全く問題はなかった。その理由は、既存の他のワイナリーの設備を借り、そこに石川彌八郎はじめ酒造スタッフが足を運び、ワインを醸造したからであった。さて、そのワイナリーとは?

文・石川彌八郎(石川酒造株式会社代表取締役 蔵元)、ブルースハーモニカ奏者
文・石川彌八郎(石川酒造株式会社代表取締役 蔵元)、ブルースハーモニカ奏者

 2015年度創業のあきる野のワイナリー、ヴィンヤード多摩の森谷社長が石川酒造を訪ねてきた。あまり宣伝をしていないためか、僕もその存在は風のうわさで聞く程度。じっくり話を聞くのはこれが初めてであった。

 ここ数年、都内に小規模なワイナリーが立て続けに開業した。業界ではそれらを「都市型ワイナリー」と呼んでいる。ヴィンヤード多摩もその一つだ。

 都市型ワイナリーの開業が可能になった理由の一つに、交通網の発達が挙げられる。冷蔵車両も充実した現在、遠方のブドウを数時間で東京に運ぶことが可能になり、東京でもワインを造れるようになったのである。

 森谷社長からじっくりお話を伺ったが、大変情熱的な方であった。多くの都市型ワイナリーが長野や山梨など他県のブドウを使っているのに対し、ヴィンヤード多摩はあきる野に畑を借りてブドウ栽培を自ら行っているのである。その広さはサッカーコート一面程度。サンプルも試飲させてもらったが、バランスのとれた良い味であった。

 さて、石川酒造を訪ねてきた要件だが、創業以来、ある程度順調に販売をしてきたのだが、コロナの打撃が大きく、苦戦しているとのこと。ついては、石川酒造の売店やレストランで販売してもらえないかとの依頼であった。森谷社長は人柄も良く、何しろワインづくりに熱心なので、何とか力になりたいと考えたが、当社も酒造会社なので、安易に他社のアルコール飲料を売るわけにはいかない。

 そこで考えた策は、僕がヴィンヤード多摩に行き、ワインを仕込み、「石川彌八郎が仕込んだワイン」として売り出すことであった。そして、石川酒造がワイン免許を取得するまではヴィンヤード多摩で管理してもらい、免許取得後、石川酒造に移入し、最後の仕上げをして瓶詰め、出荷する。これなら合法である。

 実は発売予定日はもう間近の12月17日。予約の受け付けは、本日から可能です。下記の酒屋さんにお尋ねください。