半農半保育士で新規就農 新たなライフスタイルで生き生きと
八王子市から青梅市梅郷に移住し、2023年4月に新規就農した木村さやかさん(42)は半農半保育士というライフスタイルで生き生きとした暮らしを送っている。週3日、市内の保育園で早朝パートとして働きながら、市内や飯能市で借りた約4500平方㍍の畑でさまざまな野菜を育てている。そんな木村さんは「子どもと畑をつなげたい」と話し、畑を体験農園として充実させていくという。

木村さんは化学肥料や農薬を使用せず、自然の力を最大限に生かして作物を育てる自然農法を実践。肥料は土着菌を生かした植物発酵液肥、草木灰、米ぬか、おからなどを使用。より自然環境に近づけるため畝間にはクローバーを植え、土の乾燥を防いでいる。
ゆっくりと大切に育てた野菜は栄養価が高く、雑味のない濃い味と評判。この時期はカブやコマツナやミズナ、カラシナなどの葉物野菜を中心に栽培。個人客への販売、飲食店や保育園に卸すほか、マルシェ等にも出店している。
そのほか、新規就農者の集い「東京ネオファーマズ」(一般社団法人東京都農業会議)の仲間らとともに、畑の地主から茶栽培を教わっており、ゆくゆくは茶畑を引き継ぎたい考え。また夫の則夫さん(41)、父の昭さん(76)とともにワスレナグサの栽培にも取り組んでいる。
足立区出身。大学卒業後に土に触れられる仕事がしたいと長野県の農業法人で研修を受けた。だが、農薬で手に炎症を起こしたことをきっかけに、より安全な農法を学びたいと考えるように。同県の自然農法国際研究開発センターで2年間パート勤務をしながら、さまざまな農法を学んだ。
その後、11年に茨城県で就農を目指したが、同年の東日本大震災による原発事故の放射能の影響で野菜作りが一時できない状況に。さまざまな外的影響を受ける専業農家の難しさに直面し、離農。半農半保育士であれば生計が立てられると考え、母が経営する保育園で働くため保育士免許を取得。6年ほど勤務した。
19年に結婚し、則夫さんが暮らす八王子市に転居。生活が落ち着つきはじめると、再び土に触れたいとの思いが浮上。21年12月に青梅市へ移住。新規就農できる畑を探し、東京都農業会議に相談。新規就農の条件を満たすため、22年4月からあきる野市の生活クラブ農園で勤務。働きながら理想とする土地を探す中で、現在の土地を紹介され、「きむら農園」の開業に至った。
木村さんは「快く畑を貸してくれた地主さん、相談にのってくれた東京都農業会議の皆さん、そして青梅での就農を支えてくれたネオファーマーズの仲間や友人に感謝しています。今は理想の野菜づくりに取り組めています。子どもたちにおいしい野菜を届けるとともに、土に触れられる環境を提供していきたい」と目を輝かせた。(鋤柄)