当コーナーは西武信用金庫と西多摩の地域メディア西の風新聞社のタイアップ企画です。4月からは創業5年以内で特色ある事業に取り組む西武信用金庫の取引先を支店担当者と本紙記者が訪ね、事業紹介と合わせて地域や将来への思いを聞いていきます。
持続可能な未来、子どもたちに
2011年の東日本大震災に伴う原発事故を機に再生可能エネルギー普及の必要性を強く感じ、大企業から青梅市の木質バイオマス専門会社に転職。新分野で8年経験を積んだ後、22年に「もりほっと」を創業した。バイオマス導入時のシステム設計から機器のメンテナンスまで一連の作業を一手に担っている。
木質バイオマスとは、木材からなる再生可能な資源のこと。木材をエネルギーとして活用するには発電の手法もあるが、木を燃やすと発生する熱・お湯を暖房や風呂に利用する方がはるかにエネルギー効率がいい。同社は全国の自治体や温浴・宿泊施設への木質バイオマスボイラーの設置を得意とする。近隣では山梨県小菅村、丹波山村の温泉のボイラーメンテナンスを手がけている。
脱炭素、持続可能な社会を目指す動きや燃料費の高騰などを追い風に、木質バイオマスが世の中に好意的に受け止められていることを実感。一方、ひとたび導入するとなれば原料の調達、燃料加工法、機器の選定、運営方法など決定事項が多く、地域を巻き込んだ体制づくりが必要なことから簡単には普及しない現実もある。小川さん自身、「正直、すごく面倒くさいエネルギー」と認識。「でも、だからこそ専門知識のある人間がトータルで対応する必要がある」という。
創業から3期目の目標は、「まずは良い事例を作って発信すること」と謙虚に構える。木質バイオマス利用を「環境に良いこと」として打ち出すだけでなく、ドローンを活用した森林の状況調査から枯れた木の有効活用までをパッケージにして提案する方法を検討している。「ナラ枯れで困っている山主さんは多い。そうした方々に提案できれば」。ゆくゆくは近隣製材所の端材や山の間伐材などを集めてボイラー用のチップに加工し、「木質バイオマスのガソリンスタンド」を作りたいという。
青梅市小曽木の古民家で、妻と子3人の5人暮らし。子どもたちに安全で持続可能な未来を手渡すという使命感が仕事の原動力になっている。自宅でも薪ボイラーで暖房と風呂の湯を賄い、庭では烏骨鶏を放し飼い。プライベートで始めた地元の里山整備活動が盛り上がり、昨年NPO法人化。活動を通じて初めて地域に仲間ができ、仕事も生活も西多摩に根を下ろしてやっていきたいという気持ちが芽生えた。「小曽木は人口が少なく、将来的には小中学校が統合されるという話もある。住んでみればのどかで良い地域。山や畑に興味のある人が増えて小曽木が元気になってくれたら」と願う。

【プロフィール】小川聡志(41)
1984年横浜市生まれ。高校・大学は山岳部。2008年慶応義塾大学大学院卒業後、キヤノン、16年森のエネルギー研究所。22年6月合同会社もりほっと創業。総務省の地域力創造アドバイザー。
合同会社もりほっと
所在地:青梅市小曾木5-3175-3
主な事業内容:木質バイオマス利用のコンサルティング、木質バイオマスの普及研修業務、木質バイオマスボイラーの販売代理店

【訪問者】西武信金 三ツ原支店 コーディネート担当 岡田さん(25)
日常的に環境問題への取り組みが求められる現代に木質バイオマスを普及させ、地域や社会に貢献していきたいという小川さんの強い信念を感じました。私自身も改めて環境問題を考えるきっかけになりました。今後も小川さんの夢の実現に向け、少しでも力になれればうれしいです。
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働いてみたい
遊びに行きたい


