当コーナーは西武信用金庫と西多摩の地域メディア西の風新聞社のタイアップ企画です。4月からは創業5年以内で特色ある事業に取り組む西武信用金庫の取引先を支店担当者と本紙記者が訪ね、事業紹介と合わせて地域や将来への思いを聞いていきます。
高齢者の喜ぶ顔見たくて
厳選した全国のおいしいものをワゴン車に積み込み、高齢者施設を訪ねて販売する「あらい屋」を2023年8月に創業。妻の亜矢子さん(45)=写真右=と二人三脚で訪問先のお年寄りを喜ばせることに心を砕いている。
夫婦で20年余り勤務した前職の食品販売会社で、高齢者施設の販売会を何度か経験。行く先々で大いに喜ばれ、「こんな商売があるのかと、すごくびっくりした」。コロナ禍、施設訪問が制限されると、当時の幸福な記憶がよみがえった。「個包装や食感のやわらかいものなど、もっと高齢者に寄り添った商品を集めれば、もっと喜んでもらえるのではないか」。夫婦そろって会社を辞め、前職の経験も生かして高齢者に特化したこだわり食品の施設訪問販売に乗り出した。
ふたりが最も重視する食品の選定基準は食品添加物を極力含まないもの。「お年寄りは商品の裏側の表示を見て、着色料、保存料、香料が入っているものは選ばない。素朴なものが喜ばれることは前職時代に覚えた」。各地の道の駅などを巡り、スーパーなどではなかなか買えない商品を探し、実際食べておいしいと感じた40品ほどを扱っている。亜矢子さんの作るプリン、クレープなどのスイーツには特にファンが多い。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など入居者の自由度が比較的高い施設をインターネットで探して電話営業をかけ、約50の訪問先を自力で開拓した。1施設1時間を目安に滞在し、持ち込んだ折り畳みテーブルにおやつなどに向く商品を広げて施設の中で買い物を楽しんでもらう。外出機会の少ない高齢者にとって買い物はエンタメ行事。自分で商品を選び勘定することで脳が刺激され、集まった人との会話も弾んで有意義な時間を過ごせるという。
ただ、中には認知症で正常な判断が難しい人や、糖尿病などで飲食制限のある人もいる。その場合は一旦商品を預かった後、ケアスタッフと相談して購入量や種類を調整する。「商売的にはたくさん買ってもらいたいが、僕らとご入居者、ケアスタッフの三方が丸く収まる三方良しの関係は崩したくない」と、良心的な営業スタイルを貫く。
常にふたりを支える言葉がある。「商売は喜ばせ合戦」。尊敬する前職の創業オーナーが常々口にしていた言葉で、「お客さんを喜ばせた者が勝つという意味。僕らも高齢の方に喜んでもらうという商売の目的を見誤らなければ、どんなこともプラスに転換できる」。訪問先がまだ少なく経済的な余裕はないが、サラリーマン時代よりも心はずっと満たされている。
「スイーツ工房までの通勤が少しでも楽になれば」と、妻に電動自転車を贈ることが目下の夢。亜矢子さんは普段から夫の考えを尊重し、家庭でも「喜ばせ合戦」を実践する。

【プロフィール】新井規夫(42)
飯能市生まれ。入間向陽高校卒業。食品会社時代に食品の選定や仕入れを学ぶ。「清濁併せ吞むことを心に据え、さまざまな人との関わりに感謝しています」
おうめ訪問販売企画あらい屋
所在地:青梅市河辺町9-2-22-302
電話:090-1045-8068
インスタグラム:araiya1010

【訪問者】西武信金 河辺支店 コーディネート担当 市川さん(33)
営業力や製菓の技術だけでなく、精神面でもご夫婦でお互い支えあって経営している様子が印象的でした。「三方良しで、目の前にいる方を喜ばせたい」という考えがとても素敵でした。亜矢子さん特製のプリンとクレープは絶品です!
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