昭島市の複合施設にブックカフェ
かつては駅前の一等地や商店街の一角に必ず存在していた「まちの本屋」。スマホの普及による読書習慣の変化やネット通販の拡大、電子書籍の台頭などで書店の閉店が相次ぎ、その数は年々減少の一途をたどっている──。中神駅前でブックカフェ「Mulberry Field(マルベリーフィールド)」を営む勝澤光さん(54)は、父が1977年に創業した小さな書店「かつざわ書店」を2008年に継承。カフェやギャラリー機能などを追加しながら新たな「まちの本屋」の形を模索してきた。そんな勝澤さんは12月1日、姉妹店「Le Livre(ル・リーブル)」を同日開業した昭島市民総合交流拠点施設「イーストテラス・サブスリー」内にオープン。「まちの本屋」の新しい挑戦を始めた。

ル・リーブルの入る「イーストテラス・サブスリー」は、JR青梅線中神駅南口から徒歩約7分の場所にあり、既存の市民交流センターの交流機能のほか、東部出張所、市民図書館、地域包括支援センター、昭島市商工会などの施設が集約されている。勝澤さんは市の公募に参加し、カフェ出店を決めた。
ル・リーブルではマルベリーフィールドで人気のサンドイッチや焼き菓子のほか、日替わりランチやカレーを提供。市民図書館とのコラボ企画として、店内に図書予約数ランキングを表示し、数百人待ちの人気本を待たずに購入できる仕組みを導入。今後、司書が選ぶ「季節の一冊」フェアなども開催していく。また施設の貸しスペースを活用したイベントなども企画している。
勝澤さんは「中神駅前の店では著者を招いたイベントなど、本を介したコミュニティづくりを主に行ってきた。ル・リーブルは本好き以外の人も利用する。そういう人にも書店の魅力を感じてもらえたら。また立川や西多摩の人が集うイベントなど、交流拠点だからできる企画を作りたい。そして今後も新しい本屋の形を模索していく」と語る。
ギャラリー・創業支援… 多機能ブックカフェに
勝澤さんは生まれも育ちも昭島市。学生時代は父が営む「かつざわ書店」を引き継ぐとは思っていなかった。高校卒業後、中国留学を経てインテリアデザインの道を選び、建材メーカーに就職。市の区画整理事業で書店の移転が決まったタイミングで、父から事業継承の相談を受けた。
駅前への移転だったこともあり、安定した売り上げを期待して10年ほど勤めた会社を退職。だが経営を始めてすぐに、ネットショッピング主流の時代に書店を経営することの難しさに直面。そんな時、親戚から「裏山で採れたタケノコを本屋で売りたい」との話が。試しに軒先で販売するとすぐに完売。本屋と他ビジネスの組み合わせに活路を見出し、地元野菜を仕入れてフレッシュマーケットを開催するように。近所にパン屋がないという声に応えてパンを仕入れたり、昭島の水を使った豆腐を販売したりと試行錯誤を重ねた。
2011年に「代官山蔦屋」がオープンするとブックカフェの注目度が高まった。勝澤さんも本屋をブックカフェに改修することを決意。飲食業は未経験だったが、周辺のレストランやカフェに足を運び、店内の様子やメニューを細かくリサーチ。店のメニューやレイアウト、営業時間等を決めていった。
13年にマルベリーフィールドにリニューアル。だが、ブックカフェに訪れる客の滞在時間は長く、回転率が悪かった。経営を安定させるため、今度はサンドイッチのテイクアウト事業を展開。これが人を呼び、軌道に乗った。19年には店舗地下の事務所兼倉庫を改装してギャラリースペースをオープン。展示会やトークイベントなどを開催するようになった。
勝澤さんは現在、事業継承で得た経験をもとに近隣で創業を目指す人の支援を行っている。「まちの本屋」は今、本好きだけでなく何かを発信したい人、開業を目指す人などが集まる、地域に必要な店となっている。
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