当コーナーは、西武信用金庫と西多摩の地域メディア西の風新聞社とのタイアップ企画です。3年目の2026年度は「若手経営者」「女性後継者」「100年企業」「個性豊かな名物社長」などがテーマ。西武信用金庫の取引先を支店担当者と本紙記者の伊藤寛子が訪ねます。
緑の空間づくりに山育ちの感覚
造園業「立山産業」(本社・福生市)の森屋佳山社長(37)は、創業55年の節目に父の杉人会長から社長職を引き継いだ三代目。名付け親の祖父は「佳山」という名前に、周囲の景観を含む「山」が「佳」くなるようにという願いを込めた。
創業当初はあきる野市養沢で砕石業を営んでいた。高度成長期が終わり砕石業が下火になると、造園業で働いていた父が祖父に願い出て業種転換。今では造園業一本で、公共事業が6割、民間企業の緑地や個人邸の庭木手入れなど4割を手がける。
森屋社長は山に囲まれた養沢で育ち、父の背中を見て育った。庭木の刈り込みバサミなど身近な道具で遊ぶうちに扱い方を覚えて祖父にほめられたのがうれしかったという。
家業を継ぐ意識は薄かったが、大学受験の際、たまたま同社を訪れた東京農業大学出身の営業担当者との出会いをきっかけに同大の造園科学科へ進学した。卒業後は大きな植栽現場を学ぶため都内の同業他社で3年修行し、入社当初からの計画通りに家業へ戻った。
「ただ作業をするのと、意図を持ってやるのは違う」と、植栽の意図をくみ取った手入れにこだわる。入札中心の公共事業で提案力を強みとし、転機となったのが武蔵五日市駅前の交流施設「フレア五日市」の植栽。地域のシンボルになる建物と捉え、入札結果が出るとすぐ面識のない落札業者に直談判して受注した。もとは地域植生と異なる設計だったものを地域の植生を生かした植栽に作り替え、自社の色を刻んだこの仕事が、地域に根ざした仕事を増やしていく今の方向性を定めるきっかけとなった。
この作り替えを提案したのが、4歳下の弟、佳泉さん。大手造園会社で7年学び、前年に入社していた。里山のような自然風の植栽を得意とし、公共事業にも取り入れる提案で成果を上げている。森屋社長は「思い入れもこだわりも強いんです」と評す。兄弟の役割の違いが会社の幅を広げている。
課題は人材育成。労働時間短縮と賃上げが求められる一方、現場に出られる時間は減っている。技術をどう身につけてもらうか、伝え方に悩むという。今年は新卒の18歳女性、20歳男性、電気設備業から転じた20代男性、昨年は元薬剤師の男性、営業職の男性(ともに30代)が入社するなど、異業種からの転職者も増えている。
山で育った感覚が、街場の造園業者とは異なる発想を生むという。切った木をゴミにせず活用する提案は、山の木を使う地域の文化から自然と身についた。目指すのは地域から長く必要とされる会社。「地域にきれいな緑が広がったらうれしい」。緑の空間づくりを通じて地域の景観を「佳」くしていく。
【プロフィール】
森屋佳山(もりや かざん)
1989年あきる野市養沢生まれ。小宮小学校、五日市中学校、拓殖大第一高校を経て、2012年東京農業大学地域環境学部造園科学科卒業。植島植木有限会社に3年勤務し2015年立山産業株式会社入社、2026年5月より代表取締役社長。2児の父。

【訪問者】西武信金 五日市支店 コーディネート担当 飯島さん(34)
ふだん聞けないお話や今後の夢を聞くことができ、充実した取材でした。森屋社長ご自身のお話はもちろん、弟の佳泉さんが取り組む事業のことや、従業員の雇用・育成についても知ることができて、とても勉強になりました。
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