Weekly News 西の風

東京西部 西多摩8市町村の地域紙 タブロイド版/毎週木曜発行

【あきる野】霧打つ椀でおもてなし 五日市駅裏「木のか」10周年

2026年5月28日

 あきる野市舘谷台の和食店「二十四節気 秋川旬材 椀ものや のか」が、5月で開店10周年を迎えた。店主の加藤鉄夫さん(60)と妻の直子さん(62)が営む小さなお店だ。

原点は若き日のバイク旅。直子さんと共に全国を巡る中で受けた温かいもてなしが原体験となり、「次は自分たちが人をもてなす仕事を」と料理の道へ。箱根の旅館で修行を積んだ後、地元あきる野の名店燈々庵や黒茶屋などで料理長を務め、2016年に独立した。

 店名の「椀もの」には、出汁への思いが詰まっている。「私は鰹と昆布の出汁が大好き。その二つだけですごく深みのある味が出る」という加藤さんは、料理を出す直前、シンプルな椀のふたに静かに霧を打つ。「あなたのためだけに用意しました、という『封じの印』です」とその心を説く。

霧を打ったふたを開けると…

 料理は「女性が一口できれいに食べられること」を大切にしながら、遊び心のある工夫を凝らす。提供するコース料理は旬の食材に合わせて内容を頻繁に変えている。

食べやすさを考慮し、食材の大きさや包丁の入れ方にもこだわった料理

 この10年は平坦ではなかった。開店直前の父の急逝や母の介護、コロナ禍、さらに免疫障害により加藤さんの手が腫れ、箸も握れない時期が1年ほど続いた。苦しい日々を支え、復帰を待ってくれたのは地元や近隣の常連客たちだった。現在は体調も回復。若い世代にも気軽に足を運んでほしいと、直子さんが勉強を重ねてSNSでの情報発信も始めている。

 新たな一歩として、檜原村の古民家ヴィラ「御根家One-ya」から縁がつながり、出張料理サービスも始まっている。「懐石というと堅苦しく思われがちですが、お客さんの要望に合わせて柔軟に対応したい」と加藤さん。武蔵五日市駅から徒歩3分のバリアフリーの店舗も、貸し切りなどの場として相談に応じる。

 「これからも料理を通じて季節を感じてもらい、会話が弾むような『好奇心が出る料理』を提供していきたい」。開業当初から貫く、心を尽くしたもてなしを今後も大切にしていきたいという。

 昼席4000円(平日のみ)〜8400円、夕席6000円〜1万2000円。

タブロイド版